平成19年度活動実績

院生協働研究

院生同士の協働研究は、院生の実践知が豊かに交流し合うことを目的として企画しています。これは、院生の自立的研究遂行能力やプロジェクトの企画・マネジメント能力を高めることに結びつきます。今年度は、小学校教員の院生と学部卒業後すぐに本専攻に進学した院生(ストレートマスター)が、協働研究を行いそれぞれ修士論文にまとめています。

平成19年度修了生・札幌市立北九条小学校教諭  氣田 幸和

平成19年度修了生・札幌市立北九条小学校教諭 氣田 幸和

今回取り組んだ『院生協働研究』は、教育現場での知識や経験を最大限に生かし、より実践的な研究を進めていくことを目的とし、ストレートマスターの大学院生は、基礎研究の情報やデータ分析などに秀でた特徴を活かし、現職教員である大学院生の私は、実践的な研究の経験をもとに、子どもの言動や子ども同士の関係の変化、担任の指導などを、背景や要因と結びつけながら分析・考察できる特徴を活かして研究を進めてきました。

その長所が最もよく表れたのは、子どもたちの共感性にかかわる調査データを、日常活動での子どもの言動と照らし合わせて、臨床的に分析し考察する作業の際でした。データで調査できる子どもの共感性は、ほとんどが感情的な側面と認知的な側面(共感的な思い)といった潜在的な内容のものとなります。しかし、研究の成果を日々営まれる学校教育の進化、改善に活かしていくためには、子どもの言動から見とれる行動的な側面での共感性(共感性の表れ)といった顕在的な内容のものも研究の遡上にあげる必要があります。この際に、協働研究であればこその複数の目で、そして即時的に研究を進められたことで、学級集団の特質、子ども個々の持ち味、そして、集団の中での子どもたちのかかわり合いの様相を、より客観的かつ臨床的な視点から分析し考察していくことができました。このような積み重ねを経て、協働研究ならではの成果として、教育現場に一般化できるような内容にまとめ上げていくことができたと考えます。

平成19年度修了生・札幌市学びのサポーター 久保井 健

平成19年度修了生・札幌市学びのサポーター 久保井 健

今回の『院生協働研究』について、ストレートマスターの立場から、活動全体を振り返り、感じたことなどについてまとめていきます。

調査を行う段階では、協働研究者のサポートのおかげで、調査協力校と円滑に関係を結ぶことができました。極力、自然な形でフィールドに参与していくためには、協力いただく方々に、目的や人間性などを知ってもらい、理解してもらうことが非常に大切だと感じました。

分析・検討の段階では、協働研究者同士の実践や知識を活かし、補完的に専門性を活用することで、新たなアプローチが可能になると共に、より理解を深めることが出来たと感じています。また、基礎研究をどのように子どもの様子と照らし合わせて考えていくのか、実践的な部分と関連させていくのかという『研究と実践の関係』、そして、実践の場が非常に近くに存在していることによる、その後の実践の変化などの『実践とその後の応用の関係』という部分も身近に存在し、その部分にアプローチしていく必要性や、さらに研究自体が広がっていく可能性を感じました。

全体的な感想ですが、私自身も、自らの専門性や、もっと高めていく必要のある部分について、考え振り返る機会になりました。そして、実際に子どもたちと関わり、先生方とともに考えていくという貴重な体験に、大きな喜びと意欲を得ることができました。最後にこの場を借りて、協力いただいた皆様に、心から深く感謝申し上げます。

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