平成19年度活動実績

平成19年度プログラムの取組をふりかえって

北海道教育大学名誉教授・北海道文教大学教授
平成19年度実施担当代表  後藤 守

大学院教育改革支援プログラムは平成19年3月で、ひとつの分節点を迎えました。この教育プログラムは、大学院学校臨床心理専攻の中心的教育対象である「現職教員」に焦点を当て、現職教員の人間発達援助に関する深い学術的教養と、それを具体的に応用するために求められる高度実践構想力の育成を主眼としています。

1.現職教員の高度実践構想力について

実施担当者メンバーが取り組んだことのひとつは、そもそも、「現職教員の高度実践構想力とは何か」について、現時点における共通の認識を、院生も含めた関係者全員の中で構築することにありました。平成19年12月に開催された、第1回教育改革支援プログラム「シンポジウム」ではこのことが中心になりました。シンポジウムの流れを端的に要約すれば、教育実践・臨床知を横軸に、教育科学における研究知を縦軸にとるとすれば、その両者が織り成すなす第1象限の中で、教育実践構想力はその精度を高めていくもののように思われます。それは、第2象限の中で展開する研究知優位の世界や第4象限の中で展開する経験知優位の世界を超える世界として、その特異性が発揮されています。

2.高度実践構想力開発プログラムを支える3つの切り口

第1象限の世界の中で、現職院生・教育臨床実践メンター・大学教員の3者によって展開する「高度実践構想力開発プログラム」は、以下に述べる3つの切り口から進められています。

(1) 教育臨床実践メンターを登用しての現職教員院生の教育実践・研究支援の定期的メンタリング

この取組は3人のメンター(相談・研修担当専門員を含む)により、延べ27回実施されています。対象院生は13名に達しています。この経験は、次年度以降、メンター持ち味を発揮させる意味からも、教員及びメンターともに、貴重な体験になりました。次年度はこれらの経験をベースに一味違うメンタリングが期待されています。

(2) 大学教員による勤務校訪問型スーパーヴァイズ

この取組は平成19年4月から、すでに開始されていた院生の勤務校訪問によるスーパーヴァイズの取組を継承し、10月以降はこのプログラムをベースに本格的に取組に着手しています。これからの現職教員の院生に対する大学院の指導法のひとつとして大きな意味を持つように思われます。

(3) 現職教員とストレートマスター同士の「協働研究」の支援

この取組は現職院生と直進型のストレートマスターとの協働研究の試みを通して、経験知の豊富な現職院生と生きた研究知を探るストレートマスターとが織り成す協働研究は、お互いを補完しあう新しい研究のスタイルとして注目されます。

以上のべた3つの切り口は、着実に実践の成果が蓄積されてきています。これらの成果がさらに、多くの院生の中で共有できるためにはこれまで以上に、修了生のための研修会の組織を通して、修了後の教育研究支援を積極的に進めていく必要があります。また、修了後の教育研究支援と合わせて、これまでの成果をさらに発展させるために、大学教員が教育臨床実践メンターと共同してFD活動を積極的に進めていくことが重要であると考えます。

今後のプログラム開発の取り組みの中で、現職院生、教育臨床実践メンター、そして、大学教員の3者が、現職院生の抱える教育実践・研究課題を通して、一体化した教育研究体制を創造することがわれわれの大きな課題であると考えます。

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