3年間の取組を振り返って

4 コメンテータによるコメント

平成21年12月13日(日)に開催した,公開シンポジウム「リサーチベースの高度な実践構想力を求めて」において,コメンテータよりプログラムについて以下のコメントをいただきました.

勝野正章先生
(東京大学准教授,日本教育学会常任理事)

他の大学,大学院にこのGPの成果をぜひ発信していただきたい.その価値は高い,十分にその価値をもっていると考えます.

① 訪問型スーパーヴィズは,単に現職教員の先生方が時間がないから大学教員がその勤務校へ行くということではない.ここが大事なポイントです.先生方が実際に勤務している場所,実践の場所で問いを打ち立てていくことが大切であるという原理,哲学に裏打ちされたのが訪問型スーパーヴィズなのでないかと考えました.

② メンタリングは,私がイメージしていたものとはちがっていました.教育実習の指導教員をメンターという場合があり,この場合は熟達者と初心者という考え方に立つものです.初心者を導いていくのが熟達者,メンターであるという捉え方になります.このプログラムの若いふたりのメンターの話を聞いて,全くこのプログラムには違った原理があったと考えます.科学の世界と実践の世界,研究の世界と実践の世界,一般の世界・普遍化の世界と一回性の世界・個別性の世界,あるいは庄井良信先生の「領域横断をする」という,その橋渡しをするのがこのプログラムのメンター,あるいはメンタリングではないかと考えました.橋渡しをする,支援をする,伴走する,ということで特に大事なことは,実践の世界と研究の世界は対等であるという原理がしっかりとしていることです.このプログラムのメンタリングの意義はそこにあります.

③ シンポジウムタイトルの「リサーチベースの高度な実践構想力を求めて」は大変,魅力的なテーマです.教師教育にかかわる一番大事な実践的かつ研究的なテーマで,関連学会で議論されています.構想力は,英語でコンセプションであり,全体をつかむという意味です.日々,実践の中でともすると授業がうまくいった,いかないということだけにとらわれがちであるが,子ども全体を理解する,子どもをつかむ,あるいは子どもだけではなく背景にある地域,社会をつかもうとするのが構想することであり,つかめる力が実践構想力であり,そこから実践を生みだすのが実践構想力である.リサーチで一番大事なのは方法論ではなく,問いである.すぐれた問いが重要であるということを多くの研究者がいっています.どういう問いを持つかというのがリサーチの命で,先生方は苦労されながらメンター,指導教員といっしょに問いを見出し,打ち立てていったというのがこのプログラムであったと思います.

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菅井邦明先生
(東北福祉大学教授,東北大学理事(教育・学生支援担当),副学長を歴任)

パネリストの発表資料で「大学院GPは現職教員の宝箱」と書いてあります.その下に,「大学院GPに希望すること」を全ての先生が書いてあります.これが結論で,大学側として今後どうやるかということはここをよく見る,大学人がよく見るということですね.これだけの,この3年間で,先生方は叫んでいるという現実を大学がどう捉えるかということになるのではないでしょうか.

ぼくたちは帰ってまた現場に戻って実践をやろうと,そこに真実があるんですから.また明日から現場で,私は仙台ですが,みんなで一緒にやっていきたいと思います.

*シンポジウム参加者アンケートに,「菅井先生のコメントは院生・修了生すべての声を代弁されていると思います.」という回答が記載されています.

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