学長 |
北海道教育大学第14代学長に就任しました。これまで、副学長および札幌校キャンパス長として大学運営の一端を担ってきましたが、学長は本学全体の舵取りを担う役割であり、これまでとは比較にならないほどの重責であると認識しています。本学の発展と教員養成・地域人材育成に力を尽くす所存です。これからの4年間、ご協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
さて現在、6年間の第4期中期目標期間の2年目ですが、本学は、「教員養成大学としての専門性の強化」「実践型教員養成への質的転換」「教育委員会等との連携強化」「地方創生を牽引する人材の養成」「学科の基礎研究成果の教員養成教育への活用」「経営基盤の強化」の6つを基本的目標として掲げて教育研究にあたっています。中期計画の評価指標の達成も含め、残り4年で上記6つの目標が達成されるよう、着実に取り組まなければなりません。ただし、4年目終了時評価の時点で6年目の成果の見通しを持つ必要がありますので、実質、残り2年で集中的に取り組み、成果を上げる必要があります。
1点目の「教員養成大学としての専門性強化」では、学校現場における臨床的研究を重視し、学問探究と実践探求の両方に軸足を置いて研究及び教育に携わる大学教員の比率を高めることを謳っています。今取り組んでいる「臨床的研究プロジェクト」の各々が成果をあげるとともに、学部と教職大学院の連携を強化し、さらには、現在設置構想中の学校現場に生起する課題を「臨床的研究」に基づいて解決することを目指す「共同教育課程による博士課程の設置」を実現することで、学問探究と実践探求の両方に軸足をおいた大学教員の比率増加に繋げたいと思います。
2点目の「実践型教員養成への質的転換」では、学生の主体的な学びを引き出しながら、実践という営みを通じて専門的知識と技能の定着及び構造化を促すことにより、教員になろうとする者に確かな実践力を身に付けさせ、教職意欲と自信を高める教育を実現すると謳っています。今年度立ち上げた「教員養成イノベーション機構」を核として、教員養成3キャンパスで開始した「省察を媒介とした実践と理論の往還によるスパイラル型カリキュラム」を軌道に乗せることで、この目標を達成したいと考えます。
3点目の「教育委員会等との連携強化」では、「養成-採用-研修」に大学と教育委員会が一体となって取り組み、教員養成・教師教育の高度化を実質的なものにするとともに、学び続ける教員を支援することを謳っています。本学は、これまでにも「教育委員会との対話の場」等を通じて北海道教育委員会ならびに札幌市教育委員会との連携を強化してきましたが、教員不足も踏まえ文部科学省が概算要求を現在行っている「地域教員希望枠を活用した教員養成大学・学部の機能強化」が認められた場合は、教育委員会と連携して積極的に申請する必要があると考えます。
4点目の「地方創生を牽引する人材の養成」では、地域の課題に向き合う「プロジェクト科目」等において理論と実践の往還をより充実・実質化させ、学生の主体的・能動的学びを促し、実践的な課題解決力獲得を強化して地方創生に寄与することを謳っています。この目標は、主に、国際地域学科と芸術・スポーツ文化学科に係る目標であり、既に種々の取り組みがなされていますが、人材養成の弛まぬ質向上を目指さねばなりません。
5点目の「学科の基礎研究成果の教員養成教育への活用」では、国際的な視野や語学・コミュニケーション能力の育成、日本語教育、地域の政策・経済・福祉・環境に関する地域教材、そして芸術やスポーツの文化価値、運動能力・健康に関する教材など、実践的・実証的な研究成果を基礎とした生きた教材を開発すると謳っています。既に、地域課題解決型探究学習のためのワークブックなどの教材作成が進められていますが、今後は、学科の成果の教員養成教育への活用の実質化が問われます。
6点目の「経営基盤の強化」では、令和2年度に策定した「経営力強化方策」等に基づき戦略的な取組を推進すると謳われています。法人運営・経営に資する人材育成の強化、民間資金等を活用した施設整備、自己収入の増加、学内資源配分の最適化等に積極的に取り組むことが求められます。
以上6つの目標は、特定の役員、教員、そして事務職員の努力だけでは到底達成されるものではありません。大学の全構成員が、各人の専門性と本学のミッション(教員養成・地域人材養成)との関わりを常に意識しながら、各々の専門性を有機的に生かすことで初めて達成されるものだと思います。また、上記以外にも、学部から教職大学院への接続プログラムの開発、生成系AIへの対応、教員養成学の本格的構築など、課題は数多くあります。
最後に、文部科学大臣の中央教育審議会への諮問「急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について」(令和5年9月25日)にある通り、日本の高等教育は、今まさに歴史の転換点に立っています。高等教育の適正規模、国公私の設置者別等の役割分担の在り方等の検討も同諮問に含まれていますので、本学も、各種データを踏まえつつ、対応の準備を今から始める必要があります。「ピンチはチャンス」という言葉がありますが、この転換点を、本学が、地域にとって必要不可欠な存在になると同時に、日本の教員養成を引っ張っていく契機と捉えたいと思います。教職員そして学生の意見に耳を傾け、また経営協議会委員の意見も踏まえながら、大学運営・経営にあたります。みなさんと共に、本学の持続的発展のため努力いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。