ブックタイトル教育大学園情報誌32号
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教育大学園情報誌32号
アトリエでの制作の様子看護師として病院に勤務していた時、看護学校からやってくる学生の指導をするようになった寺田明矢子(てらだあやこ)さんは、その時の経験から看護学生の指導や教育について興味を持ち、さらに看護学校で教鞭をとるようになりました。ご自身の人生経験を踏まえて、現在は教育社会学の研究室でキャリア教育の研究を深めていらっしゃいます。そんな寺田さんに研究内容やその背景についてお聞きしました。―大学院に進学しようと思ったきっかけは何ですか? もともとは看護師として病院に勤務し、職場に実習に来る学生指導を経て看護学校で教員をしていたのですが、結婚・妊娠のため、一度仕事を辞めました。二人目を出産した時には専業主婦でした。いずれは看護学校に戻るつもりでしたが、妊娠中から大学院で勉強したいと思っていました。その理由としては、自分の学生時代と比べて、カリキュラムも時代背景も全く違う今の看護学校を卒業した人たちが、看護学校でどのような教育を受けてきたのかに興味があったからです。また、看護教員として働いている際、上司との意見交換や現場で臨床にあたっている看護師さんとお話している時に、根拠となる知識があるわけでもなく、自分たちの経験則で「今の学生はこうだから?」と話すことに物足りなさを感じていました。そこから、今のキャリア教育について勉強したいと考え、大学院に進学しました。―看護なのになぜ、北教大の大学院に進学されたのですか? 自分が学びたいことは何かと考えたときに教育社会学にたどり着きました。看護系の大学院だと、看護のより専門的な知識を深めることになり、教育とはズレが生じてしまうと思いました。また、医療だけでなく教育について学ぶことで幅広い視野を持てるようになりたいと考えました。―現在はどのような研究をされていますか? キャリア教育についての研究をしています。看護学校を卒業した学生を社会に送るための指導を行っている際に、現場の方々から「もっとこういう教育をしてください」と声を掛けられ、求められるものがどんどん増えていることに違和感がありました。その違和感が何かを考え、また、たくさんの先生方と関わるうちに、キャリア教育が一番近いということが分かりました。社会に求められる人材を追求するキャリア教育を通して、社会人として必要な要素を身に付けるだけでなく、女性が多い看護職で、女性としての自己実現を叶えてほしいと考えるようになりました。そのため、修士課程では看護学生の生涯にわたるキャリア教育についての研究をしています。自分自身、紆余曲折の人生を歩んできたため、もっと先を見据えて人生を歩んでいった方がいいのではないかと思い、現在の研究に至ります。―これからの人生についてどうお考えですか? また看護学校に戻って専任教員として働くつもりです。修士論文でまとめたものを生かして、学生にこれからの人生について考えてもらえるような関わりができたらいいなと思っています。看護学校ではキャリア教育についての授業が無いため、個別的に指導をしていくことになると思います。また、社会学ってとても面白くて、社会学を勉強したことで、周りが当たり前だと思っていることに対して自分が違和感を覚えることが、実は間違っていなかったということも分かったので、これからは自信を持って指導していけそうです。 看護学校の教員は、看護学校に入ってきたばかりの一年生が基本的な知識や技術を身に付けて卒業していく姿を見られる、大変なことはあるけれど頑張って良かったなと思える魅力的な、本当にやりがいのある仕事です。―最後に、私たち学部学生に向けてメッセージをお願いします。 これから社会に出てたくさんの経験を重ねていくと思いますが、時間があるときにまた勉強をし直すのもありだと思います。女性だから育児をするべきなどといった世間が思う当たり前は当たり前じゃなくて、色々なやり方があっていいんです。周りの意見に押しつぶされずに自信を持って生きていってほしいです。北海道教育大学大学院教育学研究科・学校教育専攻・学校教育専修2年話=寺田 明矢子(てらだ あやこ)さん自身の人生から見つめるキャリア教育研究インタビュアーの声函館校・国際地域学科・地域教育専攻4年山邉 瑞穂(やまべ みずほ)「教育」という言葉を聞くと学校の先生というイメージしかありませんでしたが、人生について学ぶキャリア教育について深く知ることができました。私自身、来年から社会人になるため自分自身の考えを持って、自分で人生を設計しながらやっていきたいなと思いました。統計処理には学内のPCを使います研究を熱く語る寺田さん17 Spring/Summer 2020 No.32