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概要

教育大学園情報誌31号

保健管理センター発企業のパワーハラスメント対策の法制化について昨年度はセクハラについて取り上げましたが、今年度はパワーハラスメント(パワハラ)について取り上げます。企業がパワハラ対策をすることが法律で義務づけられたからです。パワハラ対策の法制化 2019年5月29日に法律(労働施策総合推進法の改正案)が制定されて、事業主は「パワハラの相談体制の整備」「発生後の再発防止策」などを義務づけられることになりました。業務上の指導との線引きが難しいとの企業側の意向を受けて、今回はパワハラ行為自体への罰則規定は見送られました。それでも法制化は職場環境改善への一歩と言えるでしょう。大企業では2020年4月から、中小企業では2022年4月から義務化される見通しです。パワハラとは 厚生労働省によるパワーハラスメントの定義は以下の通りです。「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」。 ここで大切なポイントは、「職場内での優位性」というのは「上司から部下へ」のみを指しているわけではないということです。ケースによっては「同僚から同僚へ」「部下から上司へ」というパワハラも起こり得ると想定されています。また、もう1つのポイントは「業務の適正な範囲を超えて」という箇所です。つまり、適正な範囲を超えない指導や注意などはパワハラには該当しないということを意味しています。たとえば、業務中の不必要な私語を注意されたからといって、それをパワハラと主張するのは難しいでしょう。パワハラの具体例 もっともどこまでを「適正な範囲」と見なすかは個人によってかなり異なる可能性があります。そこで厚生労働省は以下のような具体例を挙げています。①身体的な攻撃:叩く、殴る、蹴るなどの暴行を受ける。丸めたポスターで頭を叩く。②精神的な攻撃:同僚の目の前で叱責される。他の職員を宛先に含めてメールで罵倒される。必要以上に長時間にわたり、繰り返し執拗に叱る。③人間関係からの切り離し:1人だけ別室に席を移される。強制的に自宅待機を命じられる。送別会に出席させない。④過大な要求:新人で仕事のやり方もわからないのに、他の人の仕事まで押しつけられて、同僚は、みんな先に帰ってしまった。⑤過小な要求:運転手なのに営業所の草むしりだけを命じられる。事務職なのに倉庫業務だけを命じられる。⑥個の侵害:交際相手について執拗に問われる。妻に対する悪口を言われる。 これらを基準に自分が受けているのはパワハラに該当するのかを考えてみると良いでしょう。職場のパワハラをなくすために 近年、パワハラ相談は増加傾向にあり、パワハラのためにうつ病などの精神疾患にかかる人も増加してきています。職場のように権力関係のあるところにはどうしてもハラスメントが生じがちです。学生の皆さんも将来仕事に就いた時にパワハラの被害者にも加害者にもならないように、パワハラについて今のうちによく理解しておくことをお勧めします。みかみけんいち(保健管理センター・カウンセラー・三上 謙一)22