ブックタイトル教育大学園情報誌31号
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教育大学園情報誌31号
ような研究ですか? 詳しく教えてください。 あれは大規模災害時のストレス反応についての研究です。東北大学、東北福祉大学、香川大学の研究者と共同で行いました。私は八年間東北にいて、東日本大震災を宮城県で経験しました。御縁があって被災地域の公務員の方の支援や学校職員の方の支援にも関わらせていただきました。この研究はその中でも、宮城県石巻市職員の四年間の健康調査を分析したものです。研究のポイントは二つあって、一つが行政職員を対象にしたことと、もう一つが災害後のストレスの長期的な変動を明らかにしたことです。 行政職員を対象にした点というのは、大規模な災害が起きた際、公務員は自身も被災しているのにも関わらず住民のために昼夜を問わず懸命に働かれます。一方、すべての住民がそうとは言えませんが、災害によって生じた行政的な、不備・不満を職員にぶつけられます。これも住民の気持ちを考えるとやむを得ない部分もあると思います。さらに、新聞などのメディアもこぞって行政の不手際を指摘します。災害による激務に加え、周囲の環境がこれでは行政職員の方は体調を崩してしまいます。そういった状況に焦点を当てる必要がありました。 災害後のストレスの長期的な変行っていました。北海道でも胆振東部地震が発生し全道的にブラックアウトを経験しましたよね。また、最近では新潟・山形で大きな地震がありました。日本にいる以上、災害を一〇〇%回避することは不可能だと思います。皆さんが教師として被災する可能性も十分にあるわけです。その際に、子どもだけでなく、長く子どもたちを支えていくために、自分のメンタルヘルスにも目を向ける必要があります。その一助になればと思っています。ですので、私が担当する「教育相談の理論と方法」では、教育相談に必要な内容ももちろんですが、話の聞き方としてブリーフセラピーについての講義と演習を取り入れ、一回だけですが、大規模な災害を含めた学校の危機についても講義をしています。―大学の教員を目指すきっかけはなんですか? 私はもともと小学校の教員を目指しており、旭川校の教育心理学のゼミの学生でした。旭川校の久能弘道先生の授業でブリーフセラピーに出会い、もっと学びたいと思ったのがきっかけです。もともとは教員を目指していたので、大学時代は皆さんと同じように教育実習にも行きましたし、研究授業もしましたし、卒業してからも非常勤ですが小学校教諭としても働いていました。―ブリーフセラピーを詳しく教えてください。 ブリーフセラピーとは、問題の原因を掘り下げるのではなく、解決に焦点をあてる心理療法です。私はこのブリーフセラピーの考え方に強く惹かれると同時に学校現場のさまざまな場面で応用できるのではないかと考えています。―先生の専門分野を教えてください。 専門分野は臨床心理学ですが、研究内容は多岐にわたっています。心理療法の一つである家族療法・ブリーフセラピーの学校現場での応用や、自分を抑えて無理をしてしまう人の特性・状態である過剰反応についての研究、大規模災害時のストレスについての研究などをしています。―四月にプレスリリースしたと私たちに話してくださったのはどの動という点については、離れた地域で報道等を目にする人の中には、被災地にいる人がみんなPTSD(心的外傷後ストレス障害)のようなひどい状況がずっと続くようにイメージされる方もいらっしゃるようです。もちろん深刻な方はいらっしゃいますし、現在もそのような症状で苦しんでいる方もいらっしゃいます。ですが、被災したすべての人が必ずPTSDになるわけではありません。この研究では、ストレスは時間とともに経過すること、日頃の職場でのコミュニケーションがストレスを低下させることを明らかにしました。この研究結果を応用するならば、多くの場合、今大変な状況でも、ストレスは時間と共に緩和されるという見通しを持つことを伝えるだけでなく、日頃から職場でコミュニケーションを取ろうと心がけるだけで、災害後のストレスを緩和させることを示すことができたと考えます。このように、大変な状況だけでなく少しでも落ち着いている状況に目を向けるのはブリーフセラピーの考え方が反映されていると思っています。 また、これらの研究は、行政職員を対象にしましたが、得られた知見は、公立学校の先生にも多くの部分で当てはまると思います。東日本大震災の際には、多くの学校が避難場所となり、初期の避難所の対応・運営は学校の先生方が釧路校・教員養成課程・地域学校教育実践専攻浅井 継悟 (あさい けいご)先生 釧路校准教授1986年生まれ。旭川市出身。東北大学大学院教育学研究科修了。本学(旭川校)の卒業生でもある。専門分野は臨床心理学、教育心理学。システム論、コミュニケーション論に基づいた家族療法、ブリーフセラピーなどに関する研究を行っている。また、過剰適応や大規模災害時のストレス反応についての研究も行っている。PROFILE大規模震災から考える、ストレスとコミュニケーションの関係研 究ファ イルもはや他人事とは言えなくなってきている大規模災害。災害を乗り越えるとき誰を、どんな側面からフォローする必要があるのか。主に、臨床心理学を研究している浅井先生から大規模災害時のストレス反応についてのお話を伺いました。インタビュアーの声釧路校・教員養成課程・地域学校教育専攻2 年柴田 好(しばた このみ)今回のお話は、大規模災害時のストレス反応についてでした。研究結果にもあったようにストレスはコミュニケーションを日常的に取ることで緩和されるので、大学生活においても仲間や先生とのコミュニケーションを大切にしていきたいと思いました。18