ブックタイトル教育大学園情報誌30号
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教育大学園情報誌30号
る学部なので、双方の先生方がしっかり連携しないと良い教育は出来ません。 まず教科の教育をするためには、内容をきちんと専門的に理解していないとだめですよね。つまりお医者さんが生理学的な知識とか解剖学的な知識など色々な知識がなければ治療の判断ができないのと同じで、学校の先生というのは、あなたは今、国語科に属していたとしても、小学校であれば社会や理科といった教科内容やその指導法、さらには心理学などの内容まで知っておかなければならないし、中学校であれば、国語であっても現代文や古典や随筆など色々な分野があります。その一つ一つに対して、子どもから何を聞かれても専門的に答えられるだけの知識をまずは学生にしっかり教えてほしい。その時いまの学校教育で何が求められているのかということを踏まえた上で学問に照らして教えるのが、専門学部から来た先生方の仕事です。 一方の教科教育の先生方は子供の成長と概念形成の関係が分かっているし、適切な教材を用いた教授法に加え、どう評価したら良いのかということも研究してきています。教科教育学における年齢別の子供たちの理解度に応じた教授法、それから評価法の分かっている先生方がいて、初めて学校での教科の教育が成り立ちます。 両者が力を合わせて進めていかなければならないのですが、とりわけ専門学部から来る先生は自分の専門を中心に語りがちです。専門をしっかり教育するのは当然ですが、その裾野を広げて学校教育で何を教えなければいけないのか、何故それを教えなければいけないのかを理解させるような教育をして欲しいと思います。 ただ、これは本学だけではなく、全国の教員養成系大学が共通して抱える課題です。専門学部からの先生には期待しています。専門家だからこそその学問の面白さをわかっているからです。ですから、来てくれる先生の心の持ちようが大事であり、教員養成教育の意味を十分に踏まえて教育と研究をして欲しいと思います。ただし、元々の専門的な研究をやめてくださいと言っている訳ではありません。教育大学で教えるためには、専門的な研究をしつつ、学校教育に関わる研究も行って、学生教育に臨まなければいけないということです。札幌校 久保章太さん 学長は動物学を専攻していらっしゃるということですが、具体的にはどういった研究をされてきたのですか。蛇穴学長 具体的な話をする前に、動物あるいは人間がどう進化してきたのかということを表した系統樹を教科書などで見たことありますか。下から上に進化していくイメージで、自分が扱う動物はどこかに必ず位置します。 私が現実に扱った生き物はイトミミズで、あまり知らない動物だと思います。だけどその面白さは何かというと、ミミズには体節がいっぱいありますよね。動物が大型化していくときに、同じものを繰り返して大きくなっていくという一つのやり方を体現しています。しかも、それを成し遂げるのに、少ない遺伝情報で済むという利点があると言われています。それを最初に使い始めた生き物の一つとして、ミミズの仲間がいます。私が先生に与えられた実験材料がその中のイトミミズでした。当時は、ミミズの仲間が昆虫やエビなどの仲間に近縁で、ミミズの仲間こそ体節制を持つ動物群の起源だと考えられていました。そういう意味で興味深い動物だと思っていました。ただ、最近の分子生物学によれば、ミミズの仲間と昆虫やエビの仲間は、どうも異なる系統のようです。 それは置いておいて、イトミミズには、オスの体節とメスの体節が別々にあります。つまり雌雄同体で、一個体の中で卵巣もあれば精巣もあります。それでも、自分の精子を使って自分の卵を受精させるということは原則せず、必ず相手を見つけて交尾します。それから、一個体の中で卵を作る、また精子を作るというように、性的には全く異なる細胞を生み出す面白さも先生に教わりました。私自身は精子や卵子に分化するというのはどのように制御されているかを突き詰めてみたいと思いました。私の先輩が卵子形成についてすでに調べていたので、私は生殖細胞の起源と精子形成過程、そしてそれを制御しているのではないかと想定されたホルモン様の分子を、分泌細胞の位置・形態ともども明らかにしたいと、研究をスタートさせました。それが大学院生までずっと続くことになりました。 結局のところ、その全貌を解明できていませんが、ホルモンに相当する分子を作っていた細胞は脳の中に存在していました。神経分泌細胞と言います。その細胞の突起が、精巣が分化する体節まで伸びていたので、そこでホルモン様の分子を分泌して、それが、精巣がある体節の生殖細胞の分化を制御しているのではないか、というところまで大学院では研究しました。 動物学は、どんな研究でもどういう風に生き物って進化してきたのだろうということにつながります。私の場合には性の分化や、それから内分泌腺ができる動物とは進化の中でどの動物からなのかを明らかにすることと結びついています。系統樹の全体像を明らかにしようという中で、自分はそのどこかの部分を担当して研究している、そんなイメージです。3 Spring/Summer 2019 No.30