ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

教育大学園情報誌32号

保健管理センター発グローバル社会と感染症飛行機をはじめとした交通機関の発達により、外国との間で人や物の行き来がこれからもさらに盛んになると考えられます。それに伴い、さまざまな感染症が海外から持ち込まれ日本国内で流行する危険が大きくなります。外来感染症の侵入を完全に防ぐことはできない 検疫を英語で“quarantine”といいますが、これにはもともと「隔離」という意味があります。昔は、外国からやって来た船はしばらくの間、港に留め置かれ、乗員はすぐに上陸することができませんでした。これは、乗員の中に感染症などの病気にかかっている者がいないかどうか確かめるためで、潜伏期間(病原体に感染してから症状が現れるまでの期間)よりも十分に長い期間、隔離しておくということです。 長い日数の船旅なら、船に乗っている間に病気の症状が現れますが、飛行機では、移動中には症状が現れず、感染症にかかっていることに気づかれないまま入国してしまう恐れがあります。このように、交通機関が発達した今日では、外来感染症の侵入を完全に防ぐことはできず、入ってくることを前提にして対策を講じなければいけません。国際的マスギャザリングと感染症 日本人学生の海外留学、あるいは外国人留学生の受け入れなど、大学は国際社会と密接に関わっています。加えて、近年は日本を訪れる外国人旅行者の数が増加を続けており、また、2019年ラグビーワールドカップ、2020年東京オリンピック・パラリンピックなどの国際的なスポーツイベントや、他の国際的な催しが今後も日本に誘致され、大勢の人が一時期に集合する「マスギャザリング」の機会が増えることが予想されます。これに伴い、通常は日本にない感染症が海外から持ち込まれ、日本国内で流行するリスクが増大することが危惧されます。日本感染症学会は、国際的マスギャザリングに備えて事前に受けておきたいワクチンとして、麻しん風しん混合(MR)ワクチン、髄膜炎菌ワクチン、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、水痘ワクチン、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)ワクチン、インフルエンザワクチンを挙げていますが、現在、日本の大学生の多くを占める年代では、MRワクチン以外は定期予防接種ではなく、こうした疾患に対して免疫を持たない若者が少なからずいると推測されます。 今後、社会のグローバル化がさらに進み、感染症についても新たなリスクが現れることが懸念されます。医療系学部の学生や、上述のような国際的イベントにボランティア参加する学生であれば、事前にワクチン接種をする機会もありますが、それでも海外から持ち込まれるさまざまな感染症に対しては必ずしも万全ではなく、他の多くの学生に至っては、さらに無防備です。感染症の流行は起こり得るものだという意識を新たにし、ワクチン接種をはじめとした対策をしっかり立てておくことが大事です。(保健管理センター・センター長・羽賀 將衛)は がまさえ21 Spring/Summer 2020 No.32