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概要

教育大学園情報誌30号

なお話も聞いて、国際的な視野から地域の課題を考えられる人間を育てようということで「国際地域学科」をつくりました。設置を計画する段階で、函館校は特に語学に力を入れて海外の人たちとコミュニケーション出来る人になってほしいと考えました。ですから、海外に積極的に出て行く学生さんが生まれることはとても嬉しく思っています。 また、函館校には「ソーシャルクリニック」という事業があります。もし病気になっても病院に行けば、やがて元気になります。この事業でも、地域自身が元気を取り戻すことをお手伝いします。学生が地域を診断し、元気になる方法を提案して、治療法を一緒に見つけます。そのあとは、街自身が元気を取り戻すのを見守るというようなイメージです。名前の付け方もうまいし、学生にとっても実践力を鍛えるいい取り組みだと思います。函館校 上野琴音さん 函館校の国際地域学科のカリキュラムは、いろんな教養を身につけ地域に出向く機会を作ることで、地域の人と問題解決を一緒にしていこうという思いが込められていると感じています。ただ、学生の中には語学だけではなく他のことに時間を使いたいと思っている学生もいます。蛇穴学長 カリキュラムを作っている方からすると、あれもこれもやってほしいという方向になりがちです。自ら学ぶように促す教育でないとだめなのかもしれませんね。例えば、単純に語学を学ばせるのではなく、海外に行く機会を作り、語学を何とか身につけなければという気持ちにさせるような仕掛けを織り込むなどの工夫ですね。 こういう質問が学生から出るということは、カリキュラムがそこまでうまくいっていない感じもします。カリキュラムの実態が、作った時の狙い通りになっているのかを、今日のように学生に直接話を聞いて、修正していかなければならないですね。どこに問題があるのかを、もっともっと掘り下げて聞かなければいけない。これは学科だけではなく、教育課程の本質的な課題かもしれないですね。岩見沢校 津田光太郎さん 岩見沢校は他のキャンパスと違い、音楽、美術、スポーツと実技系が多くある特殊なキャンパスだと思いますが、岩見沢校に期待することは何でしょうか。蛇穴学長 こういう話を聞いたことがあります。小児科の壁に日本昔話の絵を描いたら子供が病院で泣かなくなった。また、東日本大震災の際に、音楽家が多く被災地に訪れています。テレビで集まった人々の表情を見るとみんな嬉しそうなんです。そして、演奏が終わった後に子供たちが「私にも楽器を弾かせて」という場面もありました。 スポーツも同じです。岩見沢校ではアダプテッドスポーツに取り組んでいます。オリンピックを目指している競技者が途中で例えば足を失ってもう競技ができないと思ったとしても、今は車イスに座っても競技ができます。挫折を味わった競技者が「私はこれで生きていく」とコメントしているのを見ました。 音楽・美術・スポーツは、人を集めたり、元気づけたり、慰めたりする力を共通に持っています。つまり、社会的包摂をすすめる有効な力を持っていると言えます。 私は、専門の道を極めるような教育をするだけではなく、自分自身が好きで身につけたものを社会でどう役立てられるのかを考えられる学科にしたいと思ったのです。専門的なことだけではなく、その裏にある芸術やスポーツの持つ力を学び、それを社会で役立てられる幅広い人間が養成されていると信じています。また、ぜひそうあってほしいと願っています。岩見沢校 秋本結以さん 私たち学生には、様々な進路があると思います。その準備の過程でもある学生生活をどのように送るべきでしょうか。蛇穴学長 誤解を恐れずに言えば、学生には大いに遊んでほしいと思っています。遊ぶということは人と関わるということです。人はそれぞれ考え方の違いはありますが、苦手だった人でも本気で話してみると、理解し合えることもあります。長い時間をかけてみないとわからないですよね。私自身も学生を一方的に決めつけてしまった過去の苦い経験があるので、出来るだけ人を一回で判断しないようにしています。 学びの方は、学科の目的があるのでそこを学生には理解してもらい、自分の得意分野を活かす道という意味で広げて考えてくれれば、それで十分だと思いますね。宇田川(本誌編集局長) 学長ご自身の研究について詳しく語っていただくなど、大変充実した座談会になりました。蛇穴学長、そして学生のみなさん、ありがとうございます。5 Spring/Summer 2019 No.30